企画営業100年が人生100年のヒントになるかもしれない

「長生きする分お金が必要になるが年金だけでは足りない、さてどうしたらよいか」。
人生100年時代についてさまざまなブログや論文を読んでいると、そういった問題意識をよく目にします。
そういった問題意識を背景に、働き方、スキルアップ、リスキリング、投資、資産形成、ライフプランニングなどの各種論点が盛り上がっているのかもしれません。

さて、今回は、試しにひとつのアイデアを検討してみます。

それは、「誰に何をいくらで売るか、について裁量を持って発案・交渉し、無理なく営業結果を出し続けられる人にとっては人生100年時代はとても楽しい時代なのではないか」というアイデアです。
「誰に何をいくらで売るか、について裁量を持って発案・交渉する営業」だと長すぎてわけがわからないので、この文では「企画営業」と呼ぶことにします。

単に新規開拓営業が得意、では不足です。

なぜなら、それだと、自分に裁量があるのは売る相手(「誰」)だけで、商品と価格の概要はあらかじめ決められていて、「決められたものをひたすら売れ」という歩合制営業もあてはまることになります。
「決められたものをひたすら売れ」という営業を一日だけ体験する程度なら「わあ、体育会系ですごい仕事もあるのだなあ」と新鮮味を感じるかもしれませんが、これを生業として日々続けることを楽しいと思う人が多いとは思えません。
鋼のような特殊メンタルの持ち主や、自分を鍛えたいという修業願望のある方など、少数派なのではないでしょうか。
また、何をいくらで売るかについて自分の裁量がない状態で売上をあげることを目指すと、しばしば買う側のニーズを軽視したごり押しや押し売りになりかねません。

誰に、だけでなく、何をいくらで売るかを含めて裁量を持って発案できると、ひとつひとつが泥臭い苦痛な作業にみえる以下のようなことも通過点として楽しめるのではないかと考えてみました。

例えば、以下のような新規開拓営業方法は手間をかければ自分でできるか、または、小規模ならば低予算でも外注できるものも増えています。
・郵送とFAXのDM
・Web問合せフォームへの営業
・チラシ配布/ビラまき
・新聞折り込みチラシ
・インターネット広告
・紹介営業
・など

コロナや特殊詐欺の広がりを境にB2Cでの効果や現実性は疑問になりつつあるかもしれませんが、以下のような方法もTPO次第で今後も使えると思います。
・飛び込み営業
・テレアポ
・など

これらは、誰に何をいくらで売るかを自分の裁量で決めて推進するのであれば、楽しいのではないかという気がします。
つまり、企画営業として取り組むなら人生100年の働き方としてありなのではないかという気がします。
誰に何をいくらで売るかを決められて、これをやったらいくらもらえる、という場合は、お金がもらえる以上の楽しさは感じにくい気がします。

一般的に、ある年齢を過ぎたころから年齢とともに、好条件での転職やポテンシャル採用はしてもらえる確率が下がっていくと思います。
雇用契約、派遣契約、のいずれも年齢を理由に採用を断ったり待遇を下げることは労働法規の理念としては原則としてNGだと思います。
ただ、実際には能力も体力も若いころと変わっていないとしても、年齢制限や賃金等条件悪化に直面するのが、雇用や派遣の世界だと思います。
つまり、被雇用者を続ける限り、ある年齢を過ぎたころから年齢とともに不利になっていく傾向があると言えそうです。
有能な営業職であっても、被雇用者の場合、何をいくらで売るかがあらかじめて決められている限り、一生やるのは多くの人にはつらそうです。

ですので、自営に憧れたり自営に転ずる人が存在するのは理解できます。

ただ、被雇用者でなく自営なら必ず明るい人生100年、となるでしょうか。
ここでは、会社経営者か個人事業主(俗にいうフリーランスとか業務委託)かを問わずに検討します。
仕事を、誰に何をいくらで売るかを自分の裁量で発案し営業してとってくることができる場合は、楽しいのではないかという気がします。
逆に、そうでなければ、法的地位が被雇用者でなく、会社経営者であろうとフリーランスであろうと「下請けの悲哀」を感じるのではないかと思われます。
つまり、人生100年の働き方として必ずしも望ましいとは言えないかもしれません。

被雇用者でなく自営でなおかつ、企画営業で結果を出し続けられる人にとっては人生100年時代はとても楽しい時代なのではないか、それを目指してはどうか、というのが今回のアイデアです。

なお、このアイデアの検討の参考にした論文の抜粋とリンクは以下です。

※考えるきっかけとして読ませていただきましたが、今回の私の文章は下記の論文の内容をふまえたり前提にしたりしているわけではなく、なんとなく思考のきっかけになった、という位置づけです。


   
       

かつては、高齢者はパソコンやインターネットを使えない人の代表例のように決めつけられてきたが、30年ほど前にウィンドウズ・パソコンが普及しはじめたのであるから、当時バリバリの20代社員が今の50代であり、30代社員が60代なので、すでにPCなどを利用した業務に熟練した人は山のようにいるし、今後ますます増加することだろう。

高齢者とフリーランス

このように考えてくると、①ICTとサービス化の時代は、好むと好まざるにかかわらず多様なフリーランスを生み出すこと、②その多くがテレワーク、モバイルワークなどの形態で働くであろうこと、③若者や中年だけでなく、高齢者もその一定割合を占めるようになるであろうこと、が予想される。

平均寿命が伸び、年金をめぐる制度と財政の動向が取りざたされ、社会とのかかわりの意義などが指摘されるなどして、60歳以降も、再雇用、定年延長、再就職など、雇用形態で就労期間を延ばす例が多くなっている。だが、さらなる就労年限の延伸となると、65歳以上あるいは70歳以上の就労意思のある高齢者のすべてを雇用形態だけで対処しようとすることは、必ずしも適切ではないだろう。現に、新たに起業家となった専業者に占める60代の割合は、男性で35%、女性で20.3%にも上る[注6]。100年人生などと長寿化にともないキャリアの時間軸がさらに伸びていけば、高齢フリーランスの存在はますます無視できないものとなるに違いない。

たしかに、自分なりのペースで仕事が進められる自由度はあるかもしれないが、報酬が必ずしも高くなく、業務量の確保が容易でないうえ、雇用労働者に比較して法制度的な支援の度合いが格段に落ちるとなれば、若者や中年のフリーランス(とりわけ専業者)の実態を踏まえた法制度的な対応措置を考慮していく必要性は大きい。他方、本業として雇用関係にありながら副業・兼業としてフリーランスをする人の場合は、その程度は相対的に小さくなる。しかし、個人としての交渉力の弱さからくる問題(契約内容やその履行、紛争処理など)や労働災害などへの対応は、両者に共通する。しかも副業・兼業者が増加し、アルバイト感覚で低い単価での受注をいとわなくなると、専業者への影響が大きくなる。

年金を受給しながらの高齢フリーランスの場合は、両者の中間となるだろうか。専業者として活発に事業活動をする人がいる一方、年金という基礎収入を得ながらのフリーランスとなるので、ともすれば副業的な意識になる人もいることだろう。この場合も、副業・兼業者の増加と同様の影響が出てくる。

   
   
—諏訪 康雄(すわ・やすお 法政大学名誉教授), 日本労働研究雑誌 2018年5月号 労働政策の展望「副業・兼業、テレワーク、そして高齢者就業」、独立行政法人労働政策研究・研修機構

引用が長くなったので、繰り返しになりますが、誰に何をいくらで売るか、について裁量を持って発案・交渉し、無理なく営業結果を出し続けられる人にとっては人生100年時代はとても楽しい時代なのではないか、と考えた次第です。
厳密には、被雇用者でなく自営でなおかつ、企画営業で結果を出し続けられる人にとっては人生100年時代はとても楽しい時代なのではないか、というのが今回の暫定結論です。

そのためにはたいへんな努力が必要と思いますが、いずれにせよ人生はたいへんなのであれば方向性をもったたいへんさのほうがベターではないかと自分に言い聞かせます。
たとえば、誰に何をいくらで売りたいか、妄想でも考えながらであれば、以下(の準備)は今日すぐにでもはじめられます。
・郵送とFAXのDM
・Web問合せフォームへの営業
・チラシ配布/ビラまき
・新聞折り込みチラシ
・インターネット広告
・紹介営業
・など

100年時代のひとつの方向性は「日々漫然と仕事をせず、年数をかけてでも裁量を拡大することを意識し、被雇用者として不利になる年齢になっても企画営業を末永くできるようにしたい。自営になることだけを自己目的化するのは危険」といったところでしょうか。


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